支部長挨拶

倫理的感受性を高めるために

 平素より、支部運営に関しまして、ご理解とご協力をいただき、ありがとうございます。令和6年4月に施行された改正精神保健福祉法により、虐待防止の措置が義務化され、通報義務の運用が開始されたことに伴い、当協会で「精神障がい者への適切なケアをおこなうための倫理教育推進事業」が開始されました。北海道支部では看護倫理指導者養成研修会を開催し、56名が参加しました。今年度は支部主催看護倫理指導者養成研修会を函館市で、本部主催看護倫理講師養成研修会を札幌市で開催します。一方で、患者さんに対する虐待防止と同時に、医療従事者を守ることにも目が向けられ、北海道は東京都に次いで全国で2番目にカスタマーハラスメント対策の条例を制定しました。精神医療の現場において患者さんから受ける暴言や暴力、ハラスメントなどの被害は切実な問題です。治療や日常的なケアをすすめるにあたり、患者さんやご家族とのパートナーシップ構築に向けて、看護の動向をふまえた最新知識の習得、安全性や個別性を重視した専門技術の向上への取り組みが急務であると考えます。精神科看護は、患者さんやご家族との信頼関係がしっかりと築かれることで心理的安全性が高まり、治療効果や生活の質が向上します。私は、看護倫理指導者養成研修会を受講して、今まで正しいと思って実践してきた看護を倫理的な視点から見直す必要性を実感しました。なぜならば、精神医療の現場は長期的な関わりになればなるほど日常的なパターナリズムに陥る危険性が潜んでいるからです。看護管理者は、患者さんや職員が被害者にも加害者にもならないように倫理的感受性を高め、組織文化を醸成することをより一層求められています。
 今年度の重点項目は、以下のとおりです。
 1.精神科看護職の人権意識を高め、倫理的感受性を磨くための教育活動を行う。
 2.身体拘束を減らすための看護実践の知識・技術の向上に向けた教育活動を行う。
 3.精神科看護に携わる全ての者を対象に資質向上を目的とした教育内容を検討し実施する。
 これらをふまえ、新年度を迎えるにあたり、研修体系の多様化や会員のニードに応えるべく、さまざまな研修会を企画しました。さらに日精看の支部研修は、近隣施設との情報交換など横のつながりが持てるというメリットがあります。多くの看護職および多職種の学びの場を有効に活用してもらうことで、組織・地域の活性化から精神科看護の質の向上につながり、「こころの健康を通して、だれもが安心して暮らせる社会をつくります。」という活動理念を実現するため、さまざまな困難にも立ち向かい、チャレンジし続けたいと思います。
 今年度もどうぞよろしくお願い申し上げます。

2025年4月
日本精神科看護協会北海道支部長 岩代 純